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ゴルトベルク変奏曲2018の演奏会評

■音楽現代2018年3月号 音楽評論家・津嶋りえこ氏

人の一生を表すような曲に、過剰な筋立てをつけないピュアな演奏。聴衆にも意味づけができる余地を残した。各声部を音量差だけでなく、表情でも弾き分けていく。まるで複数の人が同時に語っているかのよう。通奏低音と他声部の対比が見事だった。舞曲風の変奏曲の中では、繊細なニュアンスのつけられた第7が秀逸。シチリアーナにも聴こえてくる優雅さも魅力的だった。技巧的な第23はクリアな音色がユニークなリズムや旋律の反進行を生き生きと引き立てる。一方第25変奏は、ホールの残曲を活用し嘆きを表現。ト短調ならではの透明感に息をのんだ。カノンの第9は和声の揺らぎが神秘的に奏され、第12では対称に置かれた旋律の流れが明快に示された。どの変奏曲も和声の解決進行に温かみが感じられる。変奏曲にちりばめられているバッハの豊かな着想が、統制の取れた配分ですっきりとまとめられていた。最後に再び現れたアリアは、人生を回想するようだった。
(2018年1月20日東京文化会館小ホール)

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